東京でマンション探しをしていた時のことです。
立地は申し分なかったものの、間取りが少し独特で、
家具をどこに置けばいいのか少し悩んでしまうようなお部屋でした。
別の物件と迷いながら、半ば答え合わせのような気持ちで内見に向かいました。
予想通り、やはり間取りは少し癖があり、
「悪くはないけれど決め手に欠ける」──そんな感覚のまま、部屋をひと通り見て回りました。
最後に、何気なくトイレの扉を開けた瞬間、
予想を裏切る“美しい香り”が空気を満たしていたのです。
フルーティでありながら、どこかミルキー。
南仏の、やわらかい陽だまりを思わせるような香りでした。
空間の印象がふっと澄み、心がまるくなるような不思議な香り。
そこにはディフューザーも、ルームスプレーも置かれていません。
けれど、きっと前に住んでいた方のお気に入りの香りが、
壁や空気にそっと残っていたのでしょう。
その香りに触れた瞬間、
揺れていた気持ちが静かに落ち着き、
「この部屋に住みたい」と思うようになっていました。
気になりすぎて、担当の方に以前住んでいた方のことを尋ねると、
「CAの方だった」と教えてくれました。
世界中を飛び回り、さまざまな美しい香りに触れてきた人だったのかな。
そう思うと、素敵な方が暮らしていた空間なのだと感じ、
その香りに背中を押されるように、その家に住むことを決めました。
いまだに、その香りがどこのブランドのものだったのかは分かりません。
けれど、あのミルキーな質感からすると、
きっとベルガモットやサンダルウッドが入っていたのだろうと、今でも思います。
香りは、空間の印象を一瞬で変え、
記憶を呼び起こし、人の心を静かに動かす。
あの日の出来事は、AYSDが大切にしている
“見えないデザイン”の力を改めて教えてくれた体験でした。
While searching for an apartment in Tokyo,
I visited a place with a wonderful location but an unusual layout.
Nothing felt quite right—until I opened the bathroom door.
A soft, unexpected scent drifted through the air—
fruity, slightly milky, and warm like gentle sunlight in the south of France.
There were no diffusers or sprays;
the fragrance must have lingered quietly from the previous resident.
And in that moment, something quietly fell into place.
The fragrance itself remains a mystery,
but its creamy warmth makes me think of bergamot and sandalwood.
Later, I learned from the agent that the former resident had been a flight attendant—
someone who had likely encountered beautiful scents from around the world.
Knowing that such a person had lived there
made the space feel even more special,
as if a trace of her presence remained in that gentle scent.
Scent can shift the feeling of a space in an instant,
stir memory, and move the heart quietly.
That day reminded me of the subtle power of “invisible design”
that lies at the heart of AYSD.


